NAVE AOSHIMA

作庭:HARVEST HIGH ! 岩村 浩生
動画撮影:gakumatsuda FILMS 松田 岳
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宮崎市青島。
太平洋に浮かぶ神秘の島。
亜熱帯植物が生い茂る島の中心に神社のある、周囲1.5km程の小さな島。

昭和37年に結婚まもない皇太子ご夫妻が宮崎市青島を訪れたことから、当時のハネムーンのメッカとなり一時隆盛を極めたが、その後は活気も薄れ海岸沿いの廃業した大型ホテルが約20年に渡り放置されるという、惨憺たる状況の時期があった。
しかし2010年頃に大型ホテルが解体された頃から、青島に変化が起こり始める。
全国屈指のサーフポイントでもある青島には、以前からサーファーたちが全国各地から集まっていた。良質な波と職住が近接した環境を求め青島へ移住する人たちが増え始め、移住者の中にはショップなどを開業する人も現れる。
徐々に宮崎にはなかった空気感が青島に広がり始め、「観光地青島」が再び活況を取り戻し始めていた。
そこへ2020年からのコロナ渦が始まる。
リモートワークやワーケーションに最適な環境を持っていた青島(宮崎市)に、さらに移住者や旅行者が増え始め、ホテルや簡易宿所の開業にまたとない機会が訪れる。

このような背景から、この計画が始まった。

敷地の東にヤシの木が植えられた道路と、その先に青々とした芝生が広がる公園があり、そこから200m程先に青島海岸つまり太平洋が広がっている。道は交通量も少なく、波風が少し強い日には波音が微かに耳に触れてくる。

メインルームのLDKは東を向き、波音と朝日と共に目覚める。青い空と朝の陽光を室内へ呼び込むため、LDKは東に向かって天井が高くなるように勾配を設けた。全開放の木製窓を開け放つと、奥行き2.7mの屋根付きテラスとLDKが一体化し、最も心地よい内と外の中間領域が現れてくる。

備え付きのキッチンで簡単な朝食を作り、昼は海で遊んだり、海沿いのカフェで仕事をしたり、ホテルで午睡したり、思い思いの時間を過ごす。
夜になると微かな波音と共に虫の音も響き始める。ダイニングで宮崎産食材を使った夕食を摂り、自然が奏でる音を聞きながら眠りにつく。

そんな一日を思い描きながら計画を行った。

NAVEとは、イタリア語では船、英語では教会の身廊という意味を持つ。
東の空へ伸びる大きな屋根は太平洋を走る船の舳先のようであり、杉の柱に囲まれたテラスはどこなく身廊のようにも見える。
海、船、教会、身廊、どの言葉からもおおらかさや包容力を想起させられるのは私だけだろうか。

ここで過ごす一日が、穏やかな日常を取り戻すきっかけとなることを願う。

  • 所在地:宮崎県宮崎市青島
  • 構造規模:木造2階建
  • 敷地面積:445.10㎡(134.64坪)
  • 延床面積:272.82㎡(82.52坪)
  • 施工:thinkbuilder(株)+(株)弓削建設
  • 竣工:2022年4月
  • 撮影:studio marsh 沼口 紀男