ISHIODORI TAKESHI ARCHITECTS

中須の家

ダイニングテーブル製作 日々-yori
――――――――――――――――――――――
住宅を設計する際の指標は無数にある。土地、周辺環境、コスト、法律、家族構成等、枚挙にいとまがない。

この住宅において最も重要で最優先とされた指標は「家相」であった。家相が最優先ではあったが、機能や居住性、快適さといった住居の本質が損なわれては元も子もない。家相と機能と居住性を満足しながら、建物の配置と間取りを決めていく作業を、諸条件から数学の方程式の解を求めるかのように進めていった。

建築主の当時の住まいを訪れたとき、築年数も経っているためか床は傾き階段も急で、現在の視点から見ると、住宅としての機能や快適性が不足している感が否めなかった。
またその日が曇天の夕暮れ時だったこともあったかもしれないが、ほとんど自然光が入らず、日中でも照明の点灯が常時必要な状況に見受けられた。

そこで、新居は自然光が充満する空間にしたいと考えた。

南側の間口いっぱいの開口部を設け、大きなレースカーテンを閉めると、光が室内中に拡散していく。
壁と天井は光を反射しないように珪藻土系の壁紙を採用した。床はチーク材、建具や家具類はチーク系色に染色し落ち着いたトーンの色調として、建具や家具の一部には格子やラタンを用いて、どことなく懐かしさを感じられる雰囲気をつくりだした。

この柔らかな光に満たされた空間で、新たな暮らしを心穏やかに過ごしていけることを願っている。

  • 所在地:宮崎県児湯郡高鍋町
  • 構造規模:木造平屋建
  • 敷地面積:343.17㎡(103.80坪)
  • 延床面積:75.74㎡(22.91坪)
  • 施工:(有)松浦建設
  • 竣工:2024年2月
  • 撮影:YASHIRO PHOTO OFFICE