ISHIODORI TAKESHI ARCHITECTS

金ヶ浜の家

宮崎県日向市の有名なサーフスポット「金ヶ浜ビーチ」を臨む住宅のリノベーション。
ビーチと家の間には国有の雑木林が広がっており、眼前にビーチは望めないが、家の周囲と内部には絶えず波の音や潮の香りが漂っている。

元の家は過去に数回の増改築と移築が行なわれており、間取りでいうと「5DK+縁側」であった。
そのうち、海側の3室とDKと縁側の一部の壁、天井、建具をすべて取り払い、海側に大きな空間をつくった。
柱や筋交いはそのまま現しとし、いくらかの耐震補強を施している。

あらわにされた無造作に林立する柱は、雑木林の木々と呼応するかのようで、室内に雑木林の空気感を呼び込んでいる。

海側の空間は床も取り払い、サーフィンやビーチで遊んだあとの濡れた足や土足でも気兼ねなく使えるよう、土間仕上げとした。

土間と壁は黒く染めている。
黒はあらゆる色を吸収し自己を消去する色だと考えている。
黒に染め上げることで雑木林の緑が際立つとともに傍に感じられ、空間が自然で満たされていく。

近年の省エネ至上主義の数値にとらわれた改修ではなく、家の原点に回帰していくような、あるがままの環境と共に暮らす良い家になったと考えている。

  • 所在地:宮崎県日向市金ヶ浜
  • 構造規模:木造平屋建
  • 延床面積:117.75㎡(35.61坪)
  • 施工:西尾建設(株)
  • 竣工:2024年7月
  • 撮影:針金 洋介