金ヶ浜の家
宮崎県日向市の有名なサーフスポット「金ヶ浜ビーチ」を臨む住宅のリノベーション。
ビーチと住宅の間に国有の雑木林が広がっているために、眼前にビーチが広がってはいないが、住宅の周囲と内部には絶えず波の音や潮の香りが漂っている。
元の住宅は過去に数回の増改築と移築が行なわれており、間取りでいうと「5DK+縁側」であった。
そのうち、海側の3室と台所と縁側の一部の壁、天井、建具をすべて取り払い、海側に大きな空間をつくった。
改修部分は筋交いの増設や構造面材張り等の耐震補強を行い、改修に伴う解体部分の解体後に現れてきた、脆弱な柱の交換や、梁や基礎の補強を行っている。
柱や筋交い、小屋組みはそのまま現しとした。
あらわにされた無造作に林立する柱は、雑木林の木々と呼応するかのようで、室内に雑木林の空気感を呼び込んでいる。
海側の空間は床も取り払い、ビーチで遊んだあとの濡れた足や土足でも気兼ねなく使えるよう、土間仕上げとした。
土間と壁は黒く染めている。
黒はあらゆる色を吸収し自己(ここでは空間)を消去する色だと考えている。
黒に染め上げることで雑木林の緑が際立つとともに室内へと侵食し傍に感じられ、空間が自然で満たされていく。
近年の省エネ至上主義の数値にとらわれた改修ではなく、家の原点に回帰していくような、あるがままの環境と共に暮らす良い家になったと思っている。
■ architecturephoto 2025.06 掲載
- 所在地:宮崎県日向市金ヶ浜
- 構造規模:木造平屋建
- 延床面積:117.75㎡(35.61坪)
- 施工:西尾建設(株)
- 竣工:2024年7月
- 撮影:針金 洋介