ひなた在宅クリニック
「日本のひなた」宮崎県宮崎市の、在宅医療を行うクリニックの移転新築工事の計画である。
患者の住まいへの高いアクセス性を備えた拠点として、市の中心部に立地している。
「在宅医療」とは、通院や入院が困難な患者の自宅や施設などへ訪問し、医師や看護師が診察・治療を行う医療のことである。
医師や看護師は日々患者のもとへ出向き、それを常駐のスタッフがバックアップするという、一般的な外来クリニックとは異なる機能や動線と居室が必要とされた。
クリニックとオフィスの中間のような建築である。
機能性を最重視しながらもシンプルで開放感があり、居心地のよいオフィス空間であること、そして「ひなた」というクリニックの名前のとおり、南国宮崎らしい外観を求められた。
外観は、南国感を演出する大きな庇を設け、建築に明確な表情を与えると同時に、宮崎の強い日差しや汚れ、時に降る火山灰から建物を守る役割を担わせている。
ダークブラウン、ベージュ、黒を貴重とした落ち着いた色調とトーンは、リゾートのような安らぎを醸成し、建物の周囲と道路沿いにはビロウやココスヤシ、ソテツ、サボテンなどの亜熱帯植物をたっぷりと植栽して、「ひなた」という名前にふさわしい南国の風景をつくり出している。
インテリアも外観と同様の色調で統一し、外部と内部を一体感のある空間構成として、建築としての統一性を図っている。
待合と診察室には大きな開口部を設け、植栽に包まれた眺めが穏やかな空気感をつくり、患者の緊張を和らげるような空間となるように考えた。
オフィスは北向きとし、大きな開口部からの安定した自然光と植栽の見える環境の中で、落ち着いて業務に集中しながらもリラックスもできる執務空間となることを意図した。
休憩室兼研修室には全長5mの大きなキッチンを備え、スタッフ同士のコミュニケーションや学びを促す場として、チーム医療を支える基盤をつくっている。
クリニックの環境が整備され、医師やスタッフが気持ちよく働くことができる環境が、間接的ではあるが、在宅医療を受ける患者がより良い医療を受けられることにつながることを願っている。
今後の超高齢化社会にあって、この建築が在宅医療という新しい医療のより良いあり方を支え、そしてクリニックのビジョンである
「自分らしい人生を過ごし、穏やかな気持で最期を迎えることができる」
その実現に少しでも寄与できれば、このうえない喜びである。
- 所在地:宮崎県宮崎市
- 構造規模:木造2階建
- 敷地面積:2593.40㎡(784.50坪)
- 延床面積:685.49㎡(207.36坪)
- 構造設計:三輪智洋建築設計事務所
- 施工:(株)志多組
- 竣工:2025年4月
- 撮影:YASHIRO PHOTO OFFICE