ISHIODORI TAKESHI ARCHITECTS

ブルースター 本社-1(外観)

“日本のひなた” 宮崎県宮崎市の象徴でもあるパームヤシの並木と海岸線沿いに広がる松林を臨む、保険代理店の新社屋である。
南国宮崎らしさを体現しながら保険代理店のイメージを覆し、若者がここで働きたいと思えるような社屋をつくることが求められた。

敷地は主要幹線道路の交差点に位置し、港に隣接している。台風時には強烈な東風に見舞われることと、30年以内に起こると言われている「南海トラフ巨大地震・津波」へのささやかな備えとして鉄筋コンクリート造が採用された。
宮崎市は気候の統計情報からみても、南西諸島を除いた九州においては最も亜熱帯に近い気候である。この心地よい気候を享受し緑豊かな松林とパームヤシの風景を取り込むための、大きな屋根をかけた半屋外のテラスを2階に設けた。テラスは会議室に隣接しており、社員やゲストの憩いの場として機能するほか、交差点に向けて2辺を開放することで街並みに対して「開かれた社屋」であることを表している。
1階も軒を大きく張り出し、通りのパームヤシと呼応するように建物周囲に亜熱帯系植物を植え込み、白い外壁に光と木々の影を映り込ませ、宮崎のおおらかでゆるりとした時空間を体現した。

街並みつまり社会に対して開かれおおらかであることで、企業と社会の結びつきが促され双方が恩恵をこうむること。企業活動の本質のひとつが建築と環境で出来上がったと考えている。

1階は執務空間と顧客とのミーティングルームで構成し、エントランスから役員室に至るまですべての室を全面ガラス張りとして、フロア全体に光が廻り見渡せるように計画し、企業の透明性と信頼感を文字通り具現化した。

保険は希望と不安と安心が同時に存在するとてもセンシティブな業務である。だからこそ、おおらかで光に溢れた、社員や顧客により安心と活力をもたらす社屋となることを目指した。

■ TECTURE MAG 2021年7月 掲載

  • 所在地:宮崎県宮崎市
  • 構造規模:鉄筋コンクリート造2階建
  • 敷地面積:1795.75㎡(543.21坪)
  • 延床面積:468.43㎡(141.70坪)
  • 構造設計:AS建築
  • 構造監理:田中一級建築士事務所
  • 施工:都北産業(株)
  • 竣工:2020年3月
  • 撮影:studio marsh 沼口 紀男