作庭　植田造園事務所　植田 敏裕
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宮崎市中心部の商業地域に建つ、老夫婦のための住宅。

敷地の南側は2階建ての住宅を挟んで高層マンションが建ち、西に2階建ての立体駐車場、東は平面駐車場という周辺環境で、眺望は全く望めない環境であった。
ただ、敷地の南端には元から樹々が植えられており、これらの樹々を手入れし作庭を行い、庭を愛でる住宅とすることが志向された。

庭師の植田氏による作庭により、樹々は新たに生命を吹き込まれたかのように瑞々しさと美しさを増し、苔や石は都市のなかにあって心の静まりと緩やかな時の流れを与え、この場に静寂をもたらしている。

この庭を眺めるための木製の開口部を全開放すると、庭と室内が渾然一体となる。

深い軒に守られた濡れ縁を介して柔らかな光が差し込み、宮崎の少し湿り気を帯びた心地よい風が、庭から室内へと通り抜けていく。
意識や視線が庭へと導かれていくよう、居間の天井は庭に向かって低くなる勾配天井としている。

居間からこの静寂な庭を眺めていると、まるで時が止まったようにも感ぜられ、ここが都市の中心であり都市に暮らしていることを忘れさせてくれる。

この静かな場で、心安らぐ穏やかな暮らしが末永く続いていくことを、心から願っている。